健康診断や、症状の精密検査で勧められることが多いのが「内視鏡検査」です。しかし、「胃カメラは痛そう」「大腸カメラは苦しいって聞いた」など、不安から検査を避けてしまう方も少なくありません。
検査を受けた人の中には「思ったより痛くなかった」という声がある一方で、「もう二度と受けたくない」というほどの強い痛みを感じた人もいます。
ではなぜ、痛みの感じ方にここまで差があるのでしょうか? 内視鏡検査で、なぜ痛みを感じるのか、どのような人が痛みを感じやすいのかを詳しく解説します。少しでも安心して検査に臨めるよう、参考にしてください。
目次
■内視鏡検査は本当に痛い?
内視鏡検査は、胃や大腸の病気を早期に発見できる重要な検査である一方、「痛そう」「怖い」と感じてしまう方が多いのも事実です。
胃カメラや大腸カメラでは、挿入時の違和感や体への圧迫感などが、痛みとして感じられることがあります。ただし、その痛みの程度には大きな個人差があり、感じ方や対策の有無によって大きく変わります。
◎胃カメラや大腸カメラで「痛い」と感じる理由とは
内視鏡検査が「痛い」と感じられる主な理由は、スコープが体の内部を通過する際の物理的な刺激です。
胃カメラでは喉や胃に、大腸カメラでは腸に圧がかかることで不快感や痛みが発生します。また、体質や精神的な緊張状態によって、同じ検査でも痛みの感じ方が異なります。
◎痛みを感じやすい人の特徴は
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小柄な方
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痩せている方
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便秘がちの方
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腸が過敏な方
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腹部手術の経験がある方
◎「痛みの出やすい場所」は
内視鏡検査は検査部位によって痛みの発生しやすい場所が異なります。特に固定されていない腸の部分では、カメラの動きで腸が引っ張られて痛みが生じやすくなります。
胃カメラ
喉を通過する瞬間に「オエッ」となる咽頭反射が辛く、これを痛みと感じる方が多い
大腸カメラ
S状結腸や横行結腸のように腸が大きく曲がっている部分を通るときに痛みを感じやすい
◎医師の技術や設備によって痛みは大きく変わる
同じ内視鏡検査でも、医師の技術や設備の充実度によっても痛みの感じ方は大きく変わります。経験豊富な医師は、体格や腸の形状に応じてスコープを丁寧に操作し、できるだけ負担をかけないように進めてくれます。
また、最新の内視鏡機器や鎮静設備が整っている医療機関では、より負担を軽減した検査を受けることもできるでしょう。
■胃カメラはどこが痛い?つらいと感じるのはなぜか
胃カメラ検査は、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道・胃・十二指腸の状態を観察する検査です。精度の高い診断が可能な一方で、「オエッ」となる感覚やお腹の張りに不安を感じる方もいます。
◎咽頭反射による「オエッ」となる苦しさについて
口からの胃カメラでは、舌の奥を内視鏡が通過する際に咽頭反射が起こりやすくなります。この反射は若い方に強く現れることがあり、苦痛を感じる大きな原因です。
しかし、経鼻内視鏡の普及により、舌の奥を通らずに挿入できるようになり、咽頭反射による苦しさが大きく軽減されています。
◎お腹の張りがつらく感じる原因とは
胃カメラでは胃の内部を見やすくするために空気を注入して膨らませる必要があります。この際に「お腹が張って苦しい」と感じることがありますが、これは胃の膨張による圧迫感が原因です。医師が適切に空気量を調整することで、不快感を和らげられます。
■大腸カメラはどうして痛いのか?
大腸内視鏡検査は、大腸の状態を詳細に観察できる検査で、大腸がんやポリープ、炎症性疾患の早期発見に役立ちます。しかし、腸が長く曲がりくねっているため、スコープの操作には注意が必要で、人によっては痛みを感じることがあります。
◎腸の形状や体格による挿入時の負担
痩せ型の方や小柄な女性の場合、腸の屈曲が強くスコープが引っかかりやすいため、挿入時に痛みを伴うことがあります。また、便秘傾向のある方は腸が硬くなりがちで、スムーズにスコープが通らず、余計な力がかかってしまうことがあります。
◎空気による膨満感とその対策について
大腸を観察するためには空気で腸を膨らませる必要がありますが、この膨満感が腹部の張りや痛みの原因になります。
空気ではなく吸収されやすい炭酸ガスを用いる施設も増えており、検査後の不快感を減らす取り組みも進んでいます。また、水を使って内視鏡を進める「水浸法」では、摩擦や張りを減らし、痛みの軽減が期待できます。
◎腸の癒着や神経の過敏さが影響するケースも
過去の腹部手術歴がある方は腸に癒着が起きていることがあり、そこを無理に通過させると痛みが発生することがあります。
また、腸の神経が敏感な方では、わずかな刺激でも痛みを強く感じる場合があります。このようなケースでは、医師が慎重に操作したり、鎮静剤を使用するなどの方法で対策します。
■痛みの不安を減らし、安心して内視鏡検査を受けるために
内視鏡検査に対する「痛い」「苦しい」というイメージは、必ずしもすべての方に当てはまるものではありません。実際には、多くの医療機関で痛みを軽減するための工夫がなされており、体質や状態に合わせた柔軟な対応が可能です。
定期的な内視鏡検査は、がんや炎症性疾患の早期発見が期待できます。自分に合った方法で、無理なく受けられるスタイルを見つけることが、健康を守る大きな一歩になります。内視鏡検査に不安を抱えている方も、まずはご相談ください。