高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、気づかないうちに進行するのが特徴です。放置すれば、脳卒中や心筋梗塞など重い病気を引き起こす可能性があります。
今回は、高血圧の具体的な治療や改善方法について詳しく解説します。生活習慣の見直しから薬による治療まで、今日から取り入れられる対策を知って、正しく血圧をコントロールしていきましょう。
目次
■高血圧の治療・改善はなぜ必要なのか
血圧が高い状態続くと、なぜいけないのでしょうか?
それは、血管にかかる圧力が常に高い状態となり、動脈硬化が進みやすくなるからです。その結果、命にかかわる疾患のリスクが高まります。
だからこそ、治療や改善は早めに始めることが大切です。
◎放置すると命にかかわる?高血圧が引き起こすリスクとは
高血圧の状態が長期間続くと、血管が厚く硬くなり、柔軟性を失います。これが「動脈硬化」で、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎不全、心不全などを引き起こします。
しかも高血圧は、症状がないまま進行することが多いため、気づかないうちに合併症が進んでしまう危険性があるのです。
◎高血圧治療の基本は「生活習慣の見直し」と「薬物療法」
本態性高血圧(原因が特定できない高血圧)の治療では、まず生活習慣の改善を行い、それでもコントロールが難しい場合には薬物療法を併用します。
この2つは相互に補い合う関係で、生活習慣の見直しが薬の効果を高め、場合によっては薬の量を減らせることもあります。
■高血圧 まず取り組むべきは生活習慣の改善
高血圧の治療において、最初に行うべきなのが生活習慣の見直しです。生活の中にある“ちょっとした習慣”を改善することで、血圧を下げる効果が期待できます。
◎塩分は控えめに。目標は1日6g未満
塩分を摂りすぎると、体内に水分がたまり、血液量が増えて血圧が上がります。日本人は平均的に塩分を摂りすぎていると言われており、1日あたりの目標は6g未満が推奨されています。加工食品や外食にも多くの塩分が含まれているため、意識的に減らす工夫が必要です。
※日本高血圧学会|ナトリウム(食塩)の減らし方
◎野菜と果物の力を借りてカリウムをしっかり補給
カリウムには、ナトリウム(塩分)の排出を助ける働きがあります。野菜や果物、海藻類、大豆製品などに多く含まれ、DASH食(高血圧を防ぐ食事法)でも重視されています。カリウムを含む食材を毎日の食事に取り入れてみましょう。
◎運動は続けることが大切。有酸素運動を習慣に
ウォーキングやストレッチ、軽いジョギングなどの有酸素運動は、血圧を下げる効果があるとされています。目安は30分以上、週に数回のペースで無理なく継続しましょう。日常生活の中に自然に組み込むのがポイントです。
◎お酒とタバコは高血圧の大敵。節度と禁煙を意識
過度な飲酒は血圧を上げる要因になります。男性ではビール中瓶1本、日本酒1合までが適量とされ、女性ではその半分が目安です。
また、喫煙は1本で15分以上血圧を上昇させるだけでなく、動脈硬化を進めるリスクもあるためできるだけ禁煙することが、健康を守るためにも重要です。
■改善が難しいときは薬による治療も
生活習慣の改善だけでは血圧が下がらない場合、医師の判断のもとで降圧薬が処方されます。
◎降圧薬には種類がある。医師が体質に合った薬を処方
降圧薬には、血管を拡げるカルシウム拮抗薬、血液量を減らす利尿薬、ホルモンの働きを抑えるARBやACE阻害薬などがあります。ひとつの薬で十分な効果が得られない場合は、複数を組み合わせて使うこともあります。
◎副作用や飲み合わせに注意し、自己判断は避ける
薬の種類によっては副作用が現れる場合があります。飲み合わせによっても効果が変わるため、自己判断で薬をやめたり変えたりするのは避けましょう。気になる症状があれば、必ず医師に相談してください。
◎治療の継続がカギ。途中でやめないことが大切
薬を飲んで血圧が下がったからといって、自己判断で中止すると、元の値よりも高くなる「リバウンド高血圧」が起こることも。高血圧治療は「継続」がとても重要です。
■日常生活でできる高血圧対策とは
日々の過ごし方の中にも、高血圧を予防・改善するヒントがあります。ちょっとした工夫で、血圧の急激な変動を防ぐことが可能です。
◎深呼吸や腹式呼吸で自律神経を整える
緊張やストレスによって交感神経が優位になると、血圧が上昇します。ゆっくりとした腹式呼吸を意識することで、副交感神経が働き、血圧を下げる効果が期待できます。特に就寝前などに取り入れると効果的です。
◎十分な睡眠とストレス対策も忘れずに
睡眠不足や過労は血圧を上昇させる原因になります。1日6〜7時間の睡眠を確保し、過度な緊張やストレスを溜め込まないよう心がけましょう。
◎温度差を避ける工夫で血圧の急変を防ぐ
冬の寒い朝や入浴時など、急激な温度変化は血管を収縮させ、血圧が急上昇する原因になります。マフラーや手袋、浴室の暖房などで体を冷やさないようにし、室内の温度差をできるだけ小さくする工夫が必要です。
■血圧の管理は家庭でもできる
家庭での血圧測定は、日々の体調管理の基本です。自分の血圧の傾向を知ることで、治療の効果を把握しやすくなります。
◎毎日同じ時間に測定する習慣を
血圧は時間帯や体調によって変動します。朝起きて1時間以内、食前・服薬前、そして就寝前など、一定の条件で測ることが大切です。できれば、座った姿勢で測定しましょう。
◎記録をつけて体調の変化をチェック
測定した血圧は記録に残しておくことで、体調の変化や薬の効果を正しく把握する手がかりになります。ノートでもアプリでも、自分に合った方法で継続することが重要です。
■「できることから」が高血圧改善の第一歩
高血圧は放置すれば、命にかかわる重大な病気を引き起こしてしまいますが、逆に言えば、日々の積み重ねでしっかり予防・改善できる疾患でもあります。
「できることから始める」ことが何より大切です。自分一人で難しいと感じる場合は、医療機関のサポートやアプリなども活用しながら、無理なく継続していきましょう。血圧のコントロールが将来の健康を守る第一歩になります。不安を感じたら、まずはお気軽にご相談ください。