
健康診断で「血圧が高め」と言われたとき、真っ先に思い浮かぶのは「塩分を控えなきゃ」かもしれません。しかし、具体的に何をどれくらい減らせばいいのか、逆に「何を食べるべきか」まで正しく知っている方は意外と少ないものです。
高血圧は自覚症状がほとんどないまま進行し、血管にダメージを与え続けます。今回は、今日から無理なく始められる「血管を守るための食事術」について解説します。
目次
■なぜ「減塩」が治療の土台になるのか
高血圧の治療で「減塩」がしつこく言われるのには理由があります。塩分のとりすぎが、物理的に血管を内側から傷つける大きな要因だからです。
◎血管がパンパンになる仕組み
私たちの体には、体内の塩分濃度を一定に保とうとする機能があります。塩分(ナトリウム)を過剰にとると、体はその濃度を薄めるために水分を溜め込みます。
すると血液全体の量が増え、ポンプ役の心臓や、通り道である血管の壁に強い圧力がかかってしまうのです。
塩分のとりすぎは体液量や血圧を上げ、結果として血管に負担をかけ続ける原因になります。
◎薬の前に「食事」で下げる
血圧の高さやリスクによっては早期に薬が必要なこともありますが、軽症であれば、まずは食事や運動などの生活習慣を変えることが一番の治療です。
根本原因である「塩分のとりすぎ」や「栄養バランス」を見直さないと、薬を飲んでも効果が出にくくなってしまいます。
■「1日6グラム未満」という目標と現実
「塩分を減らしましょう」と言われても、ゴールが見えないと続きません。実は、健康な人と高血圧の人では目指すべき数値が違います。
◎一般の目標と高血圧治療の目標
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、健康な成人の塩分摂取目標量を男性7.5g未満、女性6.5g未満としています。
一方、すでに高血圧がある場合、日本高血圧学会のガイドラインでは「1日6.0g未満」という、さらに厳しい基準が推奨されています。
◎日本人の平均は「約9.8g」
調査(令和5年 国民健康・栄養調査)によると、日本人の食塩摂取量の平均は約9.8gです。多くの人が目標値(6.0g)の1.5倍以上の塩分をとっている計算になります。
今の食事を「気持ち薄味にする」程度では届かない、意識的な見直しが必要な数字です。
■血圧を下げる「DASH食」を取り入れる
「減らす」ことばかり考えると食事は辛くなります。そこで取り入れたいのが、世界的に推奨されている「DASH(ダッシュ)食」という食事療法です。これは「血圧を下げる栄養素を積極的にとる」という食事法です。
◎DASH食とは?
野菜・果物・海藻を中心に、全粒穀物(玄米や全粒粉パンなど)、豆類・ナッツ、低脂肪の乳製品を増やし、飽和脂肪酸(肉の脂など)や甘い飲料・加工食品を控える食事のことです。
◎野菜や果物で「排塩」する
意識したいのが、野菜や果物に多い「カリウム」です。カリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として排出させる働きがあります。
ほうれん草やブロッコリー、バナナなどを毎食加えるだけで、とってしまった塩分の影響を少し抑えることにつながります。
◎血管を安定させるミネラルと脂質
カリウム以外にも、カルシウム(牛乳、ヨーグルト、豆腐など)やマグネシウム(納豆、海藻など)は血管の収縮を抑えるのに役立ちます。また、青魚(サバ、イワシなど)に含まれるEPAやDHAは、血液中の脂質バランスを整え、動脈硬化リスクを下げることが期待されています。
■知らずに食べている「隠れ塩分」の罠
「自分は薄味派だから大丈夫」と思っている人ほど危ないのが、加工食品や外食に潜む「隠れ塩分」です。
◎加工食品や練り製品の落とし穴
ハムやソーセージ、かまぼこ、ちくわなどは、保存性を高めるために多くの塩分が使われています。調理の手間がなく便利ですが、味付けなしでも塩辛い食品なのです。食べる頻度を減らすか、買うときに「減塩」と書かれたものを選んでみてください。
◎麺類のスープは「塩水の塊」
警戒すべきは、ラーメンやうどん、そばなどの汁物です。麺類のスープをすべて飲み干すと、それだけで6g近い食塩をとってしまうことがあります。たった一食で、1日分の許容量を使い切ってしまう計算です。「麺だけ食べて汁は残す」、これだけで大幅な減塩になります。
■コンビニでもできる! 賢い「血管ケア」の選び方
忙しい毎日、自炊が難しい日もあります。「コンビニは体に悪い」と決めつけず、選び方のコツさえ押さえれば高血圧対策の味方にできます。
◎「食塩相当量」を見るクセをつける
パッケージ裏の「栄養成分表示」を必ず見るようにしましょう。チェックするのは「食塩相当量」だけです。これは食品中のナトリウム量を換算したもので、日々の目標(g/日)と同じ物差しで比較できます。同じようなお弁当でも、商品によって塩分量が倍近く違うこともあります。
◎具材のイメージだけで選ばない
おにぎりなら「梅干し=塩分が高い」というイメージがありますが、商品によっては他の具材の方が塩分が高いこともあります。サラダはドレッシングが盲点です。
最初からかかっているものではなく、別売りのものを選び、かける量を半分にするか、ノンオイル・減塩タイプを選びましょう。
■【重要】腎機能低下・服薬中の方の注意点
ここまで「野菜や果物をたくさん食べよう」と書きましたが、すべての人に当てはまるわけではありません。特定の持病や薬によっては、逆効果になる場合があります。
健康診断で腎機能の指摘を受けている方や、すでに高血圧の薬を飲んでいる方は、自己判断でカリウムを積極的にとったり、特殊な減塩調味料を使ったりするのは避け、必ず主治医や管理栄養士に相談しましょう。
■食事・運動・体重管理は「足し算」で効く
高血圧の対策は、減塩だけではありません。「肥満の解消」「適度な運動」「節酒」「禁煙」など、複数の生活習慣を少しずつ改善することで、相乗効果が生まれます。
すべてを完璧にやる必要はありません。まずは「麺類の汁を残す」「野菜を小鉢一つ増やす」「買う前にラベルの数字を見る」。そんな小さな行動の積み重ねが、将来のあなたの血管を守ります。
血圧が気になるけど、どうしたらいいかわからないという方は放置せず、まずはご相談ください。
