糖尿病って治る? 血糖値をコントロールする糖尿病の治療や薬について解説|小森内科クリニック|岡崎市の内科・消化器内科

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糖尿病って治る? 血糖値をコントロールする糖尿病の治療や薬について解説


「糖尿病」と聞くと、「一度かかると一生治らない」「薬をずっと飲み続けなければならない」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。


確かに、糖尿病は完治が難しい病気ではありますが、適切な治療と生活習慣の見直しによって、血糖値を安定させ、健康な人と変わらない生活を送ることは十分に可能です。


この記事では、糖尿病の基本的な治療方法についてわかりやすく解説します。これから治療を始める方も、すでに治療中の方も、自分に合った治療法を見つけるヒントになれば幸いです。


■糖尿病って治るの?治療のゴールを知ろう


糖尿病は、風邪のように「完全に治す」ことが難しい病気です。糖尿病の治療の目的は、「治す」ことだけではなく、「病気とうまく付き合いながら、健康な毎日を維持する」ことにあります。


血糖値をしっかりコントロールできれば、糖尿病が原因で合併症を起こすリスクを大きく下げ、健康な人と変わらない生活を送ることも可能です。


◎「治る」ってどういうこと?完治とコントロールの違い


糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる病気です。一度診断された糖尿病は、たとえ数値が正常になっても、油断して生活習慣が乱れると再発する可能性があります。


そのため、「治る(完治する)」というより、「良好にコントロールできている状態」を目指すのが一般的です。


◎健康寿命をのばすのが本当の治療目標


糖尿病の最大のリスクは、目や腎臓、神経などに起こる合併症です。これらは生活の質を下げ、将来的には透析や失明など深刻な結果を招くこともあります。糖尿病の治療の本当のゴールは、「合併症を防ぎ、健康な期間(健康寿命)をできるだけ長く保つこと」です。


■まず何から始める?糖尿病治療の基本


糖尿病と診断されたとき、多くの方が「まず何をしたらいいの?」と戸惑うかもしれません。治療の基本は、食事や運動といった生活習慣の見直しから始まります。


◎生活習慣の見直しが治療の第一歩


糖尿病の多くは、食べすぎ・運動不足・ストレスなどが積み重なって発症します。そのため、生活の中で「太らない」「血糖値を上げすぎない」工夫が重要になります。日常の習慣を少しずつ変えることが、大きな効果を生むこともあるのです。


◎食事療法は無理なく


食事療法では、「何をどれだけ、どう食べるか」がポイントになります。一気に厳しく制限する必要はなく、少しずつバランスのとれた食事に切り替えることで、無理なく続けましょう。


◎運動で「インスリンが効きやすい体」に変える


ウォーキングや軽い筋トレなど、無理のない運動を取り入れると、体が糖をエネルギーとして使いやすくなります。これにより、血糖値を下げるインスリンがより効果的に働くようになります。運動は「続けること」が大きな効果につながります。


■薬はいつから?糖尿病の薬物療法ってどんなもの?


生活習慣の改善を続けても血糖値が高いままの場合、次のステップとして薬による治療が始まります。

「薬を使い始めたら一生やめられない」と思う方もいるかもしれませんが、実は生活改善によって薬の量を減らせるケースもあります。


◎薬を使うのはどんなとき?


薬の使用は、血糖コントロールがうまくいかない場合や、合併症を予防するための手段です。体に合った薬を、必要な期間だけ使うことで、将来の健康を守ることにつながります。


◎飲み薬と注射薬、どっちを使うの?


糖尿病の薬には、飲み薬(経口薬)と注射薬があります。2型糖尿病の方はまず飲み薬から始めることがほとんどですが、血糖値の状態や合併症の有無によっては注射薬を使うこともあります。ただし、注射=重症というわけではありません。


■糖尿病の薬はこんなに種類がある!


糖尿病の薬は、「血糖値を下げる」という目的は共通ですが、その仕組みや使い方はさまざまです。人によって病状や体質が異なるため、合う薬も違います。医師と相談しながら、自分に合った治療を見つけていくことが大切です。


◎インスリンを出すタイプの薬


膵臓に働きかけて、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促す薬があります。DPP-4阻害薬やスルホニル尿素薬、GLP-1受容体作動薬などが代表的です。これらは血糖値が高いときにインスリンを出す手助けをすることで、血糖値の急上昇を防ぎます。


◎インスリンの効き目を助ける薬


血糖値が高いのは、インスリンが十分に効いていない「インスリン抵抗性」が関係していることもあります。メトホルミンやチアゾリジン薬は、体がインスリンを効率よく使えるようにサポートする薬です。メトホルミンは副作用が少なく、体重が増えにくい薬として広く使われています。


◎糖を体に吸収させない薬


糖を吸収・排出する流れに作用する薬もあります。小腸で糖の吸収をゆっくりにして、食後血糖値の急上昇を抑える「α-グルコシダーゼ阻害薬」や、腎臓から余分な糖を尿に出してしまう「SGLT2阻害薬」があります。SGLT2阻害薬は、体重減少や血圧低下などの効果もあり、近年注目されています。


◎2つの薬が1つに!配合薬


複数の作用を持つ薬を組み合わせた「配合薬」も増えています。飲む回数が減ることで、飲み忘れを防ぎやすくなるというメリットがあります。ただし、それぞれの薬の副作用にも注意が必要なので、医師と相談しながら使用することが大切です。


■薬だけじゃない!合併症を予防するために気をつけたいこと


糖尿病の治療は血糖値だけを見ていればよいというものではありません。血圧、コレステロール、体重なども重要な管理項目です。これらの数値が乱れると、動脈硬化が進み、心臓や脳の病気につながることもあります。


◎体重・血圧・コレステロールも血糖と同じくらい大切


糖尿病がある方は、高血圧や脂質異常症も抱えていることが少なくありません。

生活習慣を改善することで、これらのリスクも同時に下げられます。例えば体重を5%減らすだけでも、大きな効果があります。


◎定期的なチェックが将来を守る


合併症の早期発見・早期治療のためには、定期的な検査が欠かせません。眼底検査、尿検査、神経の検査、フットケア、歯科検診など、トータルで健康を守る視点が必要です。


■糖尿病と向き合うことは、自分の未来を守ること


糖尿病は「治す」ことよりも、「コントロールして共に生きる」ことが大切な病気です。薬を使うことは決して特別なことではなく、むしろ自分の体を守る手段の一つです。正しい知識とサポート体制があれば、糖尿病と上手に付き合うことができるでしょう。


生活習慣の改善がうまくいっても、時に薬の力が必要になることもあります。それは決して「失敗」ではありません。あなたの健康を守るための「選択肢の一つ」です。もしご自身の血糖値や治療について不安なことがあれば、一人で悩まず、ご相談ください。


小森内科クリニック
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