健康診断や人間ドックで「大腸ポリープが見つかりました」と言われたとき、頭によぎるのが「これって大腸がんとは違うの?」という不安ではないでしょうか。
見た目が似ているため混同されがちな大腸ポリープと大腸がんですが、実はその性質も治療法もまったく異なる病変です。
今回は、ポリープとがんの構造的な違いや関係性、見分け方、そして治療アプローチの違いまで、解説します。大腸ポリープとがんの違いが気になる方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
■大腸ポリープと大腸がん、何が違うの?
大腸ポリープと大腸がんは、いずれも大腸の粘膜にできる“しこり”のような病変ですが、医学的には明確に区別されています。
◎大腸ポリープ=いわば“良性のおでき”
大腸ポリープとは、大腸の内側(粘膜)にできる「いぼ状の隆起」を指します。その多くは良性で、自覚症状がなくても健康診断や内視鏡検査で偶然見つかることがほとんどです。
ポリープには「非腫瘍性(がん化しない)」と「腫瘍性(がん化の可能性あり)」の2種類があり、腺腫(せんしゅ)と呼ばれる腫瘍性ポリープは、放置するとがんへと進行するリスクがあります。
◎大腸がん=細胞が暴走する“悪性腫瘍”
大腸がんは、腸の粘膜の細胞が異常を起こし、制御不能な増殖を始めた状態です。周囲の組織に浸潤(しんじゅん)したり、リンパ節・他臓器へ転移する可能性があるのがポリープとの大きな違いになります。進行すればするほど治療が難しくなるため、早期発見が鍵となります。
◎「違いの理解」が予防の第一歩になる
大腸ポリープと大腸がんは「形が似ている」だけで、本質的にはまったく異なる病変です。しかし、その一部のポリープががんの入口となるため、早い段階で切除することが有効な予防策となります。
違いを正しく知っておくことは、過剰な不安を避けつつ、適切に検査・治療へつなげるうえで非常に重要です。
■「ポリープからがんになる」は本当?
見た目が似ているだけでなく、ポリープとがんには進行上のつながりもあります。「ポリープ=がんの前段階」とされるのはなぜか、みていきましょう。
◎腺腫性ポリープはがん化しやすいタイプ
大腸がんの8〜9割以上は、腺腫性ポリープから始まるとされています。腺腫性ポリープは最初は良性ですが、時間の経過とともに細胞の性質が少しずつ変化し、がんに進行する可能性があるタイプです。
10mmを超える腺腫はがん化のリスクが高まるため、検査で見つかった段階で切除しておくことが、大腸がんを未然に防ぐ有効な手段になります。
◎鋸歯状ポリープ(SSL)もリスク因子
SSL(鋸歯状ポリープ)は、平坦で腸の粘膜に溶け込むような形をしているため、内視鏡でも見つけにくいタイプのポリープです。腺腫とは異なる経路でがんに進行することが知られており、この進行ルートは「鋸歯状経路(serrated pathway)」と呼ばれます。
10mm以上のSSLは、腺腫と同等かそれ以上にがん化のリスクがあるとされ、大腸がんの早期予防という観点からも重要な対象となっています。
◎すべてのポリープががんになるわけではない
すべてのポリープががんになるわけではありません。非腫瘍性ポリープ(過形成性や炎症性)はがん化リスクが極めて低く、治療の必要がないこともあります。重要なのはどのポリープが危険かを見極めることです。そのためにも検査と診断が欠かせません。
■外見だけでは見抜けない!違いを見分けるための検査
「良性か悪性か」を見た目で判断するのは困難です。確実に違いを見極めるには、適切な検査が必要です。
◎内視鏡で“疑い”を見つける
まずは内視鏡検査です。肛門からカメラを挿入し、大腸全体を観察します。ポリープの有無、大きさ、形、色調の異常などをリアルタイムで確認できるため、がんや前がん病変を早期に発見するための効率的な方法です。
◎生検と病理検査で“違い”を確定する
内視鏡で見つかったポリープは、その場で組織の一部を採取(生検)し、病理検査に回します。がんかどうかの確定診断は、顕微鏡での細胞観察に委ねられるため、見た目だけではわからない“本当の違い”がここで明らかになります。
◎ポリープならその場で切除も可能
ポリープの多くは内視鏡でそのまま切除できます。検査と治療を同時に行えるのは内視鏡検査の大きなメリットです。切除されたポリープはすべて病理検査され、がん化の兆候がないか細かく調べられます。
■ポリープとがん、治療にも違いがある!
「良性か悪性か」で治療の重みはまったく違ってきます。ここでは治療方法の差に注目してみましょう。
◎ポリープなら多くは内視鏡で完結
5〜10mm程度の小さなポリープであれば、外来で日帰り切除が可能な場合がほとんどです。出血などのリスクも低く、数日で日常生活に戻れることが多いのが特徴です。
◎大腸がんはステージ別に治療内容が変化
大腸がんは、進行度(ステージ)に応じて手術、抗がん剤、放射線治療などを組み合わせる必要があります。がんが進行してリンパ節や他臓器に転移していた場合、治療は長期化・重症化します。
◎「がんじゃなかった」と言えるための切除もある
内視鏡で切除する際には、がんかどうかを確かめるためという目的も含まれます。切除しておくことで、安心が手に入るという側面もあるのです。
■「大腸ポリープと大腸がんの違い」を知ったら、次は検査を考える段階へ
大腸ポリープと大腸がんは、見た目こそ似ていても、その性質や進行の仕方、治療の選択肢には明確な違いがあります。こうした違いを理解しておくことは、不安を必要以上に大きくしないためにも、そして正しく対処するためにも大切です。
自覚症状がなくても、40歳を過ぎた方や家族に大腸がんの既往がある方は、一度検査を受けてみることをおすすめします。
検査によって「問題なし」とわかれば、それだけで安心につながりますし、もしポリープが見つかっても早期に対処できれば、将来の不安を減らせます。まずは気軽にご相談ください。