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便潜血陽性後に迷う再検査と大腸カメラの選び方
便潜血検査で1日分でも陽性が出たら、便の検査をやり直してもくわしい検査の代わりにはならないため、大腸カメラなどの精密検査を受ける必要があります1。便潜血検査は血がまじっているかを見るふるい分けで、やり直しで陰性になっても先の陽性は消えないためです。この記事では、2つの検査の役わりのちがいや準備の手順、仕事や家族の予定との合わせ方をまとめます。
この記事の要点まとめ
- 便潜血検査で1回でも陽性なら、もう一度の便検査ではなく、大腸カメラでくわしく調べることが勧められます。
- 便潜血検査は血がまじっているかを調べ、大腸カメラは腸の粘膜をじかに見て、場合によってはポリープ切除もできます。
- 前の日からの準備や鎮静剤、検査後の制限は、勤務や送迎の予定、飲んでいる薬とあわせて前もって相談しましょう。
便潜血検査のやり直しと大腸カメラの違い:調べる目的と分かること
便潜血検査は出血の有無を、大腸カメラは粘膜そのものを見る検査
便潜血検査と大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、調べるねらいと分かることが大きくちがいます。便潜血検査は、症状のない方が受ける大腸がん検診の入り口で、便にまじった目に見えない血を調べます。いっぽう、大腸カメラは腸の粘膜をじかに見てたしかめる、くわしい検査です2。
| 項目 | 便潜血検査(2日法など) | 大腸カメラ(大腸内視鏡検査) |
|---|---|---|
| 検査の目的 | 出血の有無を調べるふるい分け(検診) | 粘膜の状態を直接確かめる精密検査 |
| 分かること | 便に血液が混じっているかどうか | 大腸がん、大腸ポリープ、炎症や痔の有無 |
| 陰性・異常なしの意味 | その日の便に出血がなかった(病変を否定できない) | 観察した範囲の粘膜に明らかな病変がない |
| 痔の影響 | 痔の出血でも陽性になることがある | 痔と大腸の病変を区別して観察できる |
| 事前準備の負担 | 自宅で便を採取するのみ | 前日の食事調整と下剤・腸管洗浄剤の服用 |
| 治療につながるか | 検査のみ(治療はできない) | 組織採取(生検)やポリープ切除につながる |
便潜血検査は、痔などがん以外の出血でも陽性になることがあるため、陽性になったからといって直ちに大腸がんと決まるわけではありません3。反対に、出血していない病変もあるため、陰性でも大腸がんやポリープを完全には否定できない限界があります4。
2回中1回の陽性や痔の出血でも、再度の便検査が精密検査の代わりにならない理由
2回提出した便のうち1回だけが陽性だった場合でも、便潜血検査をやり直して済ませることは勧められません1。大腸ポリープや早期の大腸がんは、いつも血が出ているとは限らないためです4。たまたま出血していない日の便を再検査に出して陰性になっても、先に出た陽性の結果を取り消すことはできません1。
また、以前から痔がある方でも、大腸の病変が同時に隠れている可能性があります。鮮血や粘血便などの見た目だけで痔か大腸の病気かを自分で判断するのは難しく、無症状のまま進行する病変も少なくありません14。
なお、ある国内の施設で便潜血が1回だけ陽性だった方を大腸カメラで調べたところ、早期の大腸がんが見つかった方は0.8%、がんになりやすいポリープが見つかった方は2.2%でした5。これは調べた人の集まりによって変わる数字であり、個人の診断結果を示すものではありません。
大腸カメラは観察に加え、条件に応じてポリープ切除につながる
大腸カメラは出血の原因を確かめるだけでなく、将来の病気を防ぐ処置につながる役割を持っています6。当院では、直径1cm程度のスコープを肛門から盲腸や一部の小腸まで挿入し、引き抜きながら大腸の粘膜を隅々まで観察します。大腸ポリープが見つかった場合は、大きさなどに応じて検査時に切除でき、必要に応じた日帰り大腸ポリープ切除に対応しています。
ただし、すべてのポリープをその場で切除できるわけではなく、大きさや形、服薬状況によっては入院設備のある医療機関での処置が検討されます。また、切除を行った場合は出血や穿孔(腸に穴があくこと)などのリスクが伴い、検査後の食事や運動、仕事に制限がかかるため、事前の確認が必要です。
ポイント
便潜血検査をもう一度受けても、くわしい検査のかわりにはなりません。大腸カメラは腸の中をじかに見て、ポリープの大きさなどによってはその場でとることもできる検査です。
交代勤務や家族の送迎がある方が、大腸カメラの前処置を予定に組み込む手順

再検査で済ませたい気持ちの背景にある、仕事や家族の予定も相談する
大腸カメラが必要と分かっていても、仕事の休みが取りにくいことやご家族の送迎などの事情から、つい便検査のやり直しで済ませたくなる方は珍しくありません。当院では生活習慣病の診療などにおいて、患者様ご本人だけでなくご家族の方のライフスタイルにも配慮しています。院長は「個々の生活環境に配慮した、納得のいく説明や治療」を判断の軸としており、まずは患者様がおかれている環境の中で調整できる部分を一緒に探していきます。
交代勤務で時間帯が不規則なことや、ご自宅でのトイレ事情、ご家族の通院送迎が重なっていることなど、診察室では訴えきれない生活上の気がかりも遠慮なくお伝えください。
前日の検査食と21時の下剤服用を、勤務予定と照らし合わせる
大腸カメラを受ける際は、前日の朝から食事と薬の準備が始まります。当院では大腸内視鏡の前日に、医院でお渡しする消化のよい検査食を朝昼夕の3食に用い、21時にプルゼニド(腸管運動促進剤)を2錠服用する流れをご案内しています。普段から下剤を飲んでいる方は、それも一緒に内服していただきます。
プルゼニドは、飲んでからたいてい8〜10時間ほどで効いてくる薬です7。ただし、効き方には個人差があります。夜勤や早番など交代勤務に入っている方は、前日の勤務帯や食事をとる時間帯、21時前後の過ごし方をあらかじめ勤務表と照らし合わせておくことが大切です。勤務の都合で時間をずらしたい場合は、自己判断で変更せず事前にご相談ください。
当日は約2時間の洗浄剤服用を見込み、トイレを使える時間を確保する
検査当日は、検査そのものの時間だけでなく、腸の中をきれいにする前処置の時間を予定に入れておく必要があります。当院では当日は朝から食事を控え、検査開始時刻に応じて腸管洗浄剤のムーベンまたはサルプレップを約2時間かけて服用する手順をご案内しています。たとえば11時検査開始なら朝7時から、12時開始なら朝8時から内服を始めます。
洗浄剤を飲んでわざとお通じをうながし、便にかたまりがなくなって、うすい黄色のすきとおった水のようなものだけが出るようになれば、検査ができます。当日は、水や白湯、うすいお茶は検査の直前まで飲めますが、コーヒーや牛乳などはひかえていただきます。仕事を何日休むかや、飲みはじめる時間の調整は、予約のときにご確認ください。
自宅での前処置中も、医院が電話で便の状態や腹痛の有無を確認する
初めて自宅で大量の洗浄剤を飲むとなると、「本当にきれいになっているか」「お腹が痛くなったらどうしよう」と不安になる方も多いのではないでしょうか。当院では大腸内視鏡の前処置をご自宅で進める間も、内服を始めてしばらく経った頃に医院から患者様へお電話をかけています。
お電話では、排便の回数や便の透明度だけでなく、腹痛や吐き気といった副作用が出ていないかまで具体的に確認を行っています。一人で判断を抱え込まずに前処置を進められる体制を整えております。連絡の時間帯や緊急時の対応などは、一般的には検査前の説明の場で確認できますので、気になる点があればお尋ねください。
ポイント
前の日は検査食を食べて21時に下剤を飲み、当日は約2時間かけて洗浄剤を飲むので、その時間を予定に入れておきます。当院では、ご自宅で準備を進めているあいだも電話で様子をうかがっています。
苦痛・リスク・検査後の制限で迷うときの判断材料と、大腸カメラの相談が向く人
鎮静剤の希望は、検査当日の移動や家族の送迎予定と一緒に相談する
検査時の苦しさや痛みへの不安から、受診をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。当院では患者様のご希望に応じて鎮静剤(麻酔)を使用した大腸内視鏡検査を行っており、ほぼ眠った状態で負担を軽くするための選択肢としてご案内しています。
鎮静剤を使用した場合は、検査後に院内で1時間ほど休んでいただき、状態が落ち着いてからのご帰宅となります。麻酔薬の影響が数時間残るため、一般的には鎮静剤を使った日は、ご自身での車やバイク、自転車の運転は控えるよう案内されます。鎮静剤を使うかどうかや当日の帰り方、付き添いの要否については、移動手段やご家族の送迎予定とあわせて事前にご相談ください。
組織採取・ポリープ切除の主なリスクと、服薬調整・検査後の過ごし方の確認事項
検査中に病変が疑われる部分の組織を少しつまみ取る生検や、大腸ポリープの切除を行うかどうかは、実際の粘膜の所見を見て医師が判断します6。これらの処置では、ごくまれに出血や、腸に穴があく穿孔などが起こることがあります。また、鎮静剤による呼吸抑制や血圧低下などの副作用が起こる可能性もゼロではありません。
当院の案内では、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)は自己判断で休薬せず、糖尿病の薬は当日朝の絶食に伴い内服しないようお伝えしています。一般的には、処置の可能性がある場合の薬の扱いは、検査前に医師と個別に決めます。検査後の食事や飲酒、運動、仕事への復帰時期も処置の内容によって変わるため、予定とあわせて確かめておきましょう。
予約から結果説明までの流れと費用は、健診結果を手元に用意して問い合わせる
一般的には、相談のための受診、検査の日、組織の検査をした場合は1〜2週間ほどあとの結果を聞く日と、2〜3回の通院になることが多いです。ただし、何日かかるか、何回通うかは、前もっての診察があるかや処置の内容で変わります。
大腸カメラにかかるお金は、保険を使って3割をはらう場合、見るだけなら数千円〜1万円ほど、組織をとる検査やポリープをとる処置が加わると1万〜3万円ほどがおおよその目安です。保険が使えない人間ドックなどでは、1.5万〜4万円ほどです。なお、ここに書いた金額は一般的な目安で当院の費用ではなく、じっさいの費用は医療機関や、検査食・鎮静剤・組織の検査などの中身によって変わります。
また、大腸カメラがどうしても難しい場合のバリウム検査や大腸CTなどの扱いも含め、岡崎市で受診を検討される際は健診結果を手元に用意してお問い合わせください。検査で異常がなかった場合も次回の検診時期を医師と確認し、もし血便や腹痛、便通の変化が出たときは次回を待たずに受診してください1。
便検査のやり直しで様子を見たくなる人ほど、大腸カメラの相談が向く理由
便潜血検査で陽性が出たら、年齢や自覚症状の有無にかかわらず、便検査のやり直しで様子を見るより大腸カメラで原因を確かめることが勧められます。2回中1回だけの陽性や痔の出血がある方も同じで、血便や腹痛などの症状がある方はなおさら早めの受診が必要です。年齢や家族歴、喫煙・飲酒などは大腸の病気のリスク要因とされており、早期発見には粘膜の直接観察が役立ちます86。
当院では消化器を専門とする医師3名体制(女性医師も常勤)で診療にあたり、患者様やご家族の方の生活環境に配慮しながらお話を伺っています。仕事のシフトや送迎の予定など、「受けたいけれど調整が難しい事情」も含めて一緒に進め方を考えてまいりますので、まずはお気軽にご相談ください。
ポイント
鎮静剤やポリープ切除は検査後の運転や生活制限に関わるため、仕事やご家族の予定、服用中の薬とあわせて事前に相談することが大切です。
よくある質問
Q. 便潜血検査で痔が原因で陽性になる確率はどのくらいですか?
A. 便潜血陽性の方を大腸カメラで調べると痔が見つかることは多くありますが、痔が陽性の原因である確率を一律の数字で示すことはできません。痔があっても、同時に大腸ポリープや大腸がんが潜んでいるケースがあるためです14。出血の色や痛みの有無だけで痔と決めつけず、医師にご相談ください。
Q. 便潜血陽性のあと、もう一度便潜血検査を受ける場合は自費になりますか?
A. 症状がなく、検診をやり直すためだけに便潜血検査を受ける場合は、健康保険が使えず自費になるのが一般的です。ただ、健診で便潜血陽性(要精密検査)と言われたときは、くわしい検査として大腸カメラを受けるのが基本で、便潜血検査をもう一度受けてもその代わりにはなりません9。保険が使えるかどうかは受診の目的や症状で変わるため、受診先へご確認ください。
Q. 大腸カメラと胃カメラを同じ日にまとめて受けることはできますか?
A. 一般的には、下剤を飲む準備の負担や、検査のあとの体の具合を見るために、胃カメラと大腸カメラを別の日に分けて受けることがあります。同じ日に受けられるかどうかは、医療機関によってちがいます。交代勤務などで通う回数を調整したいときは、どちらを先に受けるとよいかや日にちの組み方を、診察のときにご相談ください。
参考文献
当院では、便潜血陽性の方への説明にあたり、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」を普段より参考にしています。
1. 大腸がん検診について:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]. https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/colon.html
2. 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けられる方へ | 国立がん研究センター中央病院. https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/gastrointestinal_endoscopy/110/index.html
3. 専門外来 | 特定の病気や症状に対して専門的な診察や治療を行う沖縄病院の外来 | 沖縄病院 – 国立病院機構. https://okinawa.hosp.go.jp/patient/specialty/
4. Liu SC, Zhang H. Early diagnostic strategies for colorectal cancer. World journal of gastroenterology. 2024. PMID: 39351429. DOI: 10.3748/wjg.v30.i33.3818
5. 便潜血検査で「1回だけ陽性」と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか? | 日本消化器内視鏡学会. https://www.jges.net/citizen/faq/large-intestine_09
6. Jacobsson M, Wagner V, Kanneganti S. Screening for Colorectal Cancer. The Surgical clinics of North America. 2024. PMID: 38677823. DOI: 10.1016/j.suc.2023.11.009
7. プルゼニド錠12㎎ 添付文書(医薬品医療機器総合機構). https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/480866_2354003F2316_2_08
8. Tsukanov VV, Vasyutin AV, Tonkikh JL. Risk factors, prevention and screening of colorectal cancer: A rising problem. World journal of gastroenterology. 2025. PMID: 39926213. DOI: 10.3748/wjg.v31.i5.98629
9. 大腸がん検診|職域におけるがん検診に関するマニュアル. https://seika2.med.u-tokai.ac.jp/ganken5.html
10. 消化器内視鏡診療におけるプロポフォールの不適切使用について ―注意喚起― | 日本消化器内視鏡学会. https://www.jges.net/news/news-official/2024/10/29/85878
1980年 自治医科大学卒業
名古屋第二赤十字病院にて臨床研修
1982年 東栄病院内科
1983年 国保作手村診療所所長
1986年 市立岡崎病院消化器科
1987年 市立岡崎病院消化器科副部長
1989年 市立岡崎病院消化器科部長
1990年 新城市民病院消化器内科医長
1991年 市立岡崎病院消化器科部長
1992年 小森内科クリニック開院
2010年 岡崎市医師会副会長
2014年 岡崎市医師会会長
2018年 岡崎市医師会監事
2020年 岡崎内科医会会長
2020年 愛知県内科医会理事
2022年 岡崎市医師会顧問
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本医師会認定産業医
【所属学会】
日本内科学会
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
