
目次
「症状がないから大丈夫」と思いたい気持ちの、その先へ
同年代の同僚が自覚症状のないまま胃がんと診断された——そんな話に、ふと胸がざわついた方もいるのではないでしょうか。胃がんや大腸がんは、早い時期には自覚症状が表に出にくい病気とされています。この記事では岡崎市の消化器内科の視点から、その医学的な背景と、40代以降に検討したい検査の考え方を整理します。忙しい方が無理なく受診計画を立てるための情報をまとめました。
この記事の要点まとめ
- 胃がん・大腸がんは初期に自覚症状が出にくく、痛みを感じにくい構造が関係すると考えられます
- 40代以降は年齢や家族歴に応じて内視鏡検査を検討し、健診と役割の違いを理解することが役立ちます
- 便潜血陰性でも安心しきれない場合があり、無症状期からの相談が体への負担軽減につながる可能性があります
胃がん・大腸がんが初期段階で自覚症状を伴わない医学的理由

消化管の粘膜表面には痛みを感じる知覚神経がない
胃や大腸の内側を覆う粘膜には、皮膚のように痛みを鋭く拾う知覚神経がほとんど分布していないとされます。内視鏡で粘膜の一部をつまんで採取する生検の際に、患者様が痛みを訴えられないことが多いのも、この構造が関係していると考えられています。病変が粘膜内にとどまる早い段階では、痛みや違和感というサインそのものが生まれにくいわけです3。「症状がない」ことは、体の内側で何も起きていないことを示すものではありません。
腹痛や血便などの症状が現れるのはどの段階か
病変が粘膜下層を越えて筋層や周囲の組織へ及ぶと、消化管の壁が硬くなる、内腔が狭くなる、表面から出血するといった変化が起こることがあります。この段階でようやく、腹痛や血便、便が細くなる、便通のリズムが乱れる、体重が落ちる、原因のはっきりしない貧血などが表に出てくることが多いと報告されています1。症状は「進行を示す手がかり」として遅れて登場するもの、と捉えておくほうが現実的でしょう。
一般的な健康診断や検診だけでは見逃されるリスク
職場健診の問診・採血・尿検査は生活習慣病の把握に役立ちますが、消化管の粘膜そのものを観察しているわけではありません。胃X線(バリウム)検査も影の形から判断するため、平坦な早期病変は捉えにくい場合があるとされています2。健診で「異常の指摘なし」だった場合も、消化管に病変がないと言い切れるものではない——この点は押さえておきたいところです。
40代から見直す早期発見のための検査ロードマップと選択肢
胃内視鏡(胃カメラ)と大腸内視鏡(大腸カメラ)の役割
内視鏡検査の特徴は、粘膜を拡大しながら直接観察できる点にあります。気になる部分はその場で生検に回し、大腸ポリープなら条件に応じて切除まで一度に行える場合もあります。胃カメラでは食道も観察範囲に入るため、食道の所見に気づく機会にもなります。当院では岡崎市の胃がん個別健診に対応しており、受診券に「胃カメラ可」の記載がある方はお問い合わせいただけます。
40代・50代における推奨受診頻度と血縁者の家族歴
国の指針では、胃がん検診は50歳以上で2年に1回、大腸がん検診は40歳以上で年1回の便潜血検査が基本的な枠組みとして示されています1。ここにピロリ菌感染の有無、萎縮性胃炎や大腸ポリープの既往といった個別の所見が加わると、内視鏡を何年ごとに受けるかは変わってきます。血縁者に胃がん・大腸がんの方がいる場合は、その発症年齢より早い時期からの相談が検討されることもあります2。間隔を自己判断で決めず、所見を踏まえて医師と一緒に組み立てていきましょう。
自治体のがん検診と医療機関での内視鏡ドック・精密検査の違い
自治体検診は少ない自己負担で受けられるスクリーニングで、対象年齢や実施内容が定められています。一方、検診で要精密検査となった場合や、症状があって医師が必要と判断した場合の内視鏡は保険診療の扱いです。症状がなくご本人の希望のみで受けるケースは自費(人間ドック扱い)となることが多いため、費用や所要時間は事前にご確認ください。
【よくある誤解】症状がなければ検査を受ける必要はないのか?
「便潜血検査が陰性だったから大腸がんは問題ない」の誤り
便潜血検査は、便に混じったごく微量の血液を拾う検査です。裏を返せば、その時点で出血していない早期の病変やポリープでは陰性になることがあります2。陰性は「病変がない」という証明ではなく、その回の採便では出血が捉えられなかったという意味合いにとどまります。逆に陽性が出たときは、痔だろうと推測して終わらせず、大腸カメラでの精査が勧められます。
腫瘍マーカー検査の役割と単独判定における限界
CEAやCA19-9といった腫瘍マーカーは、診断後の経過を追う指標として使われる一方、早い段階では数値が動かないことも少なくありません。喫煙や良性疾患で上昇する場合もあり、数値だけで判断するのが難しい検査です3。血液検査は手軽ですが、粘膜を直接観察する内視鏡や画像検査と組み合わせて読み解くもの、という位置づけになります。
無症状で早期発見できた場合の身体的負担と治療の進め方の違い
病変が粘膜内にとどまる段階で見つかった場合、内視鏡による切除で対応できるケースがあり、入院期間や体への負担が比較的軽く済むこともあります3。進行した状態では外科手術や薬物療法を組み合わせ、治療期間が長くなる傾向があると報告されています。だからこそ、症状のない時期にあえて検査を検討する意味があるといえるでしょう。
仕事で忙しい方が岡崎市内で受診を検討するためのステップ
事前診察から検査当日・結果説明までの基本的な流れ
大まかな流れは、①事前診察(問診・採血、食事や下剤の説明)②検査当日③結果説明の3ステップ。胃カメラは観察自体が10〜15分程度、大腸カメラは前処置を含めて半日ほどを見込みます。生検や切除を行った場合、病理の結果説明は概ね1〜2週間後になります。通院はおおよそ2〜3回と考えて業務を調整すると、計画が立てやすくなります。
身体的・時間的負担を和らげる配慮と工夫
検査中の苦痛が気がかりな方には、鎮静剤の使用や経鼻内視鏡といった選択肢があり、胃と大腸を同じ日に相談できる場合もあります。ただし鎮静剤を使った当日は車の運転を控えていただく必要があるため、送迎や公共交通の手配を前もってご検討ください。岡崎市にお住まいで仕事の合間の受診をお考えの方は、ご希望をあらかじめお伝えいただけると調整しやすくなります。
気づいたら早めに相談を。無症状期から注意したい軽微な身体の変化
胃もたれや食欲の低下が続く、便が細くなる、下痢と便秘を繰り返す、健診で貧血を指摘された。こうした小さな変化は、相談のきっかけとして十分です。強い腹痛が続く場合、あるいは黒色便や大量の血便がみられる場合は、早めの医療機関受診をご検討ください1。
よくある質問
Q1. 大腸がんは症状が出ないこともありますか?
A. 早い段階では自覚症状がほとんど見られないことがあります。粘膜に痛みを感じる神経が乏しいため、血便や便通の変化は病変が進んでから現れる傾向があるとされています。
Q2. がんは症状がなくても進むのでしょうか?
A. 消化管のがんは、症状という形でご本人に伝わる前に少しずつ広がっていく場合があります。だからこそ、症状の有無とは切り離して検査の時期を考える発想が用いられています。
Q3. 胃がんと大腸がんで現れる症状の違いは何ですか?
A. 胃がんでは胃の痛みや不快感、食欲の低下、黒色便などが挙げられ、大腸がんでは血便、便が細くなる、便通のリズムの変化などが挙げられます。いずれも他の疾患でも起こりうる症状ですので、原因の見きわめには検査が必要になります。
Q4. 胃がんは自覚症状なしで進むのですか?
A. 早期胃がんの多くは無症状とされ、胃炎や胃潰瘍と区別しにくい軽い症状にとどまることもあります。内視鏡で粘膜を直接観察する意義は、まさにこの点にあります。
Q5. 検査のために何日も仕事を休む必要がありますか?
A. 検査自体は日帰りで行われるのが一般的で、事前診察・検査日・結果説明で合わせて2〜3回の来院が目安です。鎮静剤を使用した日は運転を控えていただくため、移動手段のご準備をお願いしています。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 公益財団法人 日本医療機能評価機構「Minds ガイドラインライブラリ」 https://minds.jcqhc.or.jp/
3. 日本消化器病学会 https://www.jsge.or.jp/
1980年 自治医科大学卒業
名古屋第二赤十字病院にて臨床研修
1982年 東栄病院内科
1983年 国保作手村診療所所長
1986年 市立岡崎病院消化器科
1987年 市立岡崎病院消化器科副部長
1989年 市立岡崎病院消化器科部長
1990年 新城市民病院消化器内科医長
1991年 市立岡崎病院消化器科部長
1992年 小森内科クリニック開院
2010年 岡崎市医師会副会長
2014年 岡崎市医師会会長
2018年 岡崎市医師会監事
2020年 岡崎内科医会会長
2020年 愛知県内科医会理事
2022年 岡崎市医師会顧問
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本医師会認定産業医
【所属学会】
日本内科学会
日本消化器病学会
日本消化器内視鏡学会
